KITABORA Yoshiaki 北洞 好明 俳句集
山さくら・六巻
一病を かかえて浸る 初湯かな
骨壷に 納まりし姉 冴え返る
せせらぎに 目覚めの早き 猫柳
誰にでも 尾をふる子犬 あたたかし
妻の手を 孫の手代わり 春炬燵
城山の 城見上げては 畑を打つ
素振りしてみて 釜を買う 農具市
口だけは まだまだ達者 胡瓜の花
急流に 散る花われは 戦中派
兵たりし 日の遥かなり 山さくら
語り合う ごとく寄り添い 残る鴨
親はなれ ここにもありて 巣立ち鳥 (晴子へ)
根性は 母親ゆずり 鉄線花 (晴子へ)
高からず また低からず 花菖蒲
少年に 踏んずけられて 蛇苺
みずからの 水輪出られず 水馬
滅多打ちして ごきぶりを 打ちそこね
終点も 起点も見えず 蟻の列
風鈴の 音もきこえて 糸電話 (サトコと)
恥ずかしきこと まだ知らず 天花粉
新築の 木の香の中の 大昼寝
亡き姉に 呼びかけられて 昼寝覚め
起きぬけに 井戸の水飲み 原爆忌
鉢植えに 水たっぷりと 終戦日
手も足も 千切るばかり 阿波踊
いくたびも 目覚めて老いの 夜長かな
嘆きとも また焦りとも 虫の声
手を合わせ 何を祈るや いぼむしり
蜉蝣の 身を引きずりて 死に支度
ひたすらに 咲きてさびしい 秋さくら
秋風や 遠き野戦の 日を思い
絵に描いたように 粧ひ 飛騨の山
とろろ飯 恋女房も 老いしかな
一輪の 茶の花押して 心足る
迷うこと 尽きぬ人生 帰り花
遠山の 今朝よく見えて 冬薔薇
綿虫の 命あるとは 思はれず
死に所 捜すごとくに 冬の蝶
生きている 証と思う 湯ざめして
息白し その言訳を 疑わず
滝の水・四巻
壺出でて より争わず 滝の水
絵屏風に 波の花散り 涼しけれ
手加減をして 子の腕の 蚊を叩く (サトコへ)
老いらくの 恋のほのかに 水引草
馬追や 明日の草刈 釜をとぎ
鵜頭の 頭をなでて 登校児
この辺り むかし色街 天の川
老いて子に まだ従わず 秋高し
文化の日 一番風呂の 湯のあふれ
身にしむや 表札今も 故人の名
ぬいぐるみ 踏まれ声出す 夜寒かな
消えてまた 生まれて消えて 雪蛍
つつがなく 家族集ひて 福寿草
障子貼る・三巻
熟考と いうこと知らず 野火走る
小娘の また鏡見て 木の芽どき
小鳥など 飼いたくなりて 春隣
梅雨茸や 序列たがえず 兵の墓
原爆忌より きっぱりと 煙草断つ
水澄むや わが胸中も 澄むごとし
嫁がせて 盗られし思ひ 秋の風 (晴子へ)
老いらくの恋 捨てきれず 冬紅葉
障子張る 母の残せし 刷毛のくせ (沢子・照子の母へ)
身に入るや 幼な子に 点滴の針 (智基へ)
寒の雨 頬をつたいて 昭和果つ
身に入むや 父の当て字の 覚え書き (貫一・好明の父へ)
枝蛙・一巻
筆跡に 歳をかくせぬ 年賀状
しきたりを 大事に継ぎて 年を越す
酒余し つまみ余して 寝正月
春寒や 窓開け放つ 妻のくせ
礼服の 肩にほつほつ 花の雨 (沢子・照子の母へ)
嫁入りの 荷物を数え 四月馬鹿
初蝶の 庭ひとめぐりして去れり
青きこと 竹にまさりて 枝蛙
軒下に 十薬垂らし 祖母の留守 (沢子・照子の母へ)
泳ぐ子の 川ま二つに 抜き手かな (サトコへ)
水着きて 兄となる子の ものわかり (智基へ)
輪の中に また輪をつくり 盆踊り
盆栽の 一樹一樹の 冬隣り
村役場 所狭しと 菊花展
偏屈で 百姓でよし 芋洗う
年つまる 手ぶらで来いと 子に電話 (晴子へ)
北洞家系譜
大祖父母 清八 とく
祖父母 金次郎 こすみ
父母 貫一 オリハ
好明 照子
(長女) 晴子
(長男) 雅丈
好明
1925年 1月 22日 岐阜生まれ
岐阜市議会議員 昭和42年より58年
2006年 国から勲章を推薦される。
父曰く:政治家として皆様に支えられ、そして皆様のお役に立つよう、当方当然の働きをしたまでのこと。
勲章は私を良き働き手として、ご推薦いただいたことと感謝し、光栄に存じます。
心より深く感謝申し上げます。勲章の受け取りに関しては、私の命ある限り感謝のみとさせていただき、ご辞退申し上げる所存であります。政治家として市民の
為に当然な仕事を、心と熱意を持って人生をかけたことができたものであり、私一人が勲章を受け取るわけにはいかないと思うのであります。
皆々様の支えとご支援があってこその人生であります。
ありがとうございました。深く感謝申し上げます。
その父の手紙は日本国において、受理されました。
私は父のそういう頑な生き様を誇りに思います。大和魂の真髄を貫く父の生き方は、私がフランスでの生活の中において、日本で生まれたことに感謝する最も深
い部分であるようです。
妻:照子
1933年 4月 6日 名古屋生まれ
美容室経営
長女:晴子
1954年 4月 24日 岐阜生まれ フランス在住
夫 Bertrand MICHALON ベルトラン・ミシャロン
孫:聡子 SATOKO 夫 森智志
1977年 2月 2日
ひ孫:舞羽 MAU
2006年 6月 24日
長男:雅丈
1958年 7月 27日 岐阜生まれ
東海勤務
妻 縁 孫長男:智基 長女:亜季 次男:尚輝