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私の人形 プッペ

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Haruko      
撮影: Kaneyoshi Takatori

murasaki
 

2006.3.23
  〓60〓 小説・晴子

 http://www.bibi-club.com/shosetsu/haruko.html
     
  フランス・プロヴァンスからアンニュイ小説
短編読みきり・オムニバス

         「私の人形・プッペ」

私は6歳、ブロンドでカールがかかった柔らかな髪、瞳はブルー。
今日は両親と南フランスの別荘へ出かけます。天気も良く素敵な旅
行になりそうです。
 
高速道路オランジュで下りてオリーブの木が沢山ある小道を走って
います。パパは運転に疲れたので少し休憩することになりました。
道路から外れた丘に車を止めた時。私はこの景色を知っていること
に気が付きました。
 
そして私はここから見えるある家に誘われるように、走って行きま
した。その家には知らないおばあさんが住んでいるようです。でも、私は声をかけて、家を通って
裏庭へと向かいました。
 
おばあさんは私を見て驚きました。両親も私の後ろから走って来て
私を止めようとしました。私はどうしても庭へ行きたくて仕方が無
かったのです。だから止める声が聞こえても、さっさと裏庭まで行
きました。
 
両親とおばあさんの会話が後ろで聞こえます。
「ごめんなさいね。娘はイメージがとっても強い子なの。この庭に
ある噴水を見たいと言って、急に走り出してしまいましたの。訳が
解りませんわ。」
「そうですか。ご遠慮いりません。どうぞ、ごゆっくり。ええと・・・
そうね、少し庭をご案内するわ。」
 
おばあさんは両親を誘って庭に入りました。




           「私の人形・プッペ」2



庭には古い噴水があります。私がその噴水の横にある古い木のカブの隙
間に、随分前、隠しておいた宝石箱を取り出すと、中には小さなバレリ
ーナがいます。蓋を開けるとオルゴールが鳴ってバレーを踊ります。
そして私の大切なペンダントが入っていました。とても懐かしい幸福な
気持ちがします。その光景を見た両親はとっても驚きました。おばあさ
んも不思議な顔をしています。何故ならこの裏庭は道路からも家からも
見えにくい場所で、木に隠れた場所だからです。

デジャヴ、私はここでこのように腰掛け、オルゴールを聴くのは初めて
ではないのです。とっても気持ちがいいのです。私のこの好きな景色の
中で、よくこのようにしていました。

そして両親とおばあさんが話しに夢中になっている間に、私は階段を上
がっていました。囲いから隠れた所に在る周り階段。ここも何度も通っ
て知っている場所です。刳り抜き窓から少し光が落ちているうっすらと
暗い階段。

懐かしい階段を上がってグルニエに入ると、大きな古い木の箱がありま
した。私は箱の中から写真や服、靴を放り出して、一番奥に寝ていたお
人形を見つけると少しカビの匂いがしました。
手でほこりを払ってキスをしました。そしてそばにあったフテイユに座
り、お人形を抱いて揺れていました。懐かしい私のプッペ。

両親とおばあさんが話しながら階段を上がってきます。母は私を見て真
っ青な顔になりました。私が
「この子は私のプッペよ。」と言うと、おばあさんは、
「ああ、神様。」と言ってヘナヘナと座り込んでしまいました。


しばらくしておばあさんが話し始めました。
「このお人形は確かに、私の祖母が大切にしていた物で、私にくれたも
のです。そしてこのペンダントは祖母のものでした。」

それから、おばあさんの誘いで近くに住む、おばあさんの弟の家に行き
ました。そこにはおじいさんがいて私を見つけると微笑んで
「待っていましたよ。」と私を抱き上げました。嬉しそうに頬を寄せて
目には涙が溢れています。

おじいさんの机の上には私に良く似た写真が飾ってあります。
両親はおじいさんに尋ねました。その写真と私があまりに似ているから
です。それに私を見た時に驚きもせず待っていたこと。
おじいさんはこんな風に話してくれました。

「今から46年前、プッペを抱いて亡くなった祖母のことが大好きだっ
た。だから、いつも何かのメッセージを私に与えて下さい。会いたいと
お祈りしていたのです。」
写真の中の少女は6歳、ブロンドでカールがかかった柔らかな髪、瞳は
ブルー、私にとてもよく似ています。

あれから数年が経ち、あの家のおばあさんからお手紙をもらいました。
古い写真とおばあさんの祖母が亡くなった日のことなどが書かれていま
す。命日は私の誕生日と同じ日が記されていました。

私のプッペは今も私と一緒にいます。
大好きな私のオルゴールとペンダントも。


                完
            


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